看護師に関してよく問題になるのは、その離職率の高さです。現在、ほとんどの病院や介護施設といった看護の現場では、常に看護師が足りない状態にあります。「新人が入ってもすぐに辞めてしまう」「人が足りないので正職員の夜勤を増やして無理矢理シフトを回している」など人手不足を嘆く声も多く聞かれ、事態は深刻のようです。しかし、看護師資格を持つ人は全国では正看護師、准看護師を合わせると約150万人ほどいます。さらに、日本看護協会が発表した看護師の離職率は、全国平均で11.0%(常勤看護師)、新人看護師でも7.9%と取り立てて高いようにも思えません。それでも、現場の人手が足りないという声が多くあるのは間違いありません。やはり表向きの数字だけでは分からない部分もありもっと具体的に問題を見る必要がありそうです。
では、看護師が離職する原因はどういったものでしょうか?それには様々な理由が考えられますが、中で目立つのは「結婚や出産を機に」という理由です。現在でもおよそ95%を女性が占める看護師では、その理由が多いのも当然でしょう。特に病棟の看護師は仕事が忙しく、なかなか定時で帰宅できなかったり、夜勤で不規則な生活にもなりがちです。その状態で家庭を持ち、子育てをするというのもかなり難しいことです。女性として仕事よりも家庭を優先させるのであればこれは仕方のない事でしょう。
他にも、忙しい職場を反映してか、人間関係の悪さや仕事のきつさ、人を相手にする仕事ゆえの精神的疲労もよく理由にあがります。特に、看護師は感情労働とも呼ばれ、常に相手に気をつかわなくてはならないので精神的ストレスもたまります。さらに、新人看護師によくあるのがリアリティショックです。新人の場合、いろいろと理想や希望を持って入ってくるものですが、えてして理想は裏切られるものです。思うような仕事ができない、希望と違う部署についた、などの不満から辞めてしまう新人もいます。
また、それ以外では正看護師と准看護師の格差の問題もあります。正看護師は国家資格を持つ看護師ですが、准看護師は都道府県知事資格であり、規定上はあくまで「看護師や医師の指示の元に働く」という補佐的な役割にとどまっています。しかし、実際の仕事では両者にそれほどはっきりした区別もなく、ほとんど同じ仕事をしているのに給料に差があるといった矛盾も生じています。特に現在では看護師も高学歴化が進み、准看護師も減少傾向にありますが、キャリアアップを考えた場合でも准看護師は一度正看護師にならなくてはならず、将来性や制度のあり方について考える必要もあります。
いろいろと厳しい現状の看護師ですが、その中で期待されている存在が男性看護師です。今のところ、全体の5%程度しかいない男性看護師ですが、女性よりも力が強く、男性患者とのコミュニケーションもスムーズなのでいろいろな部署で求められています。結婚など家庭の事情で離職しにくいというメリットもあり、今後の看護業界を支える存在としても期待されています。